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    2年目8月イベント【房州旅行 闇の帳】

    本当は、気づいていたのではないか。
    お兄様に房州の旅を誘われた時に。
    鯛の浦の船上で背から抱かれた時に。
    ――いえ、それよりも遥か前、帝都での日々のひとつひとつの中で、私は気づいていたのではないか。
    お兄様の御心に。
    その御心に呑まれても構わないと思い始めている自分に。

    海鳴りが聞こえる。
    壁の外で、房州の海が轟いている。
    私の漏らす声も、お兄様の息遣いも、大洋の響きに飲みこまれ溶けていく。
    小さな部屋の暗闇の中、布団の柔らかさを背に感じる。
    お兄様の手が滑るたびに、夜の海に沈んでいくような錯覚を覚える。
    沈んでいるはずなのに、恐ろしいほどに甘かった。




    2年目12月イベント【澱む清廉】

    土砂降りの上野公園に他に人はなく。
    掴まれた肩が痛くて身を捩ろうとして、
    私ははじめて、清村様が顔を歪めていることに気づきました。
    「一年。いや、せめて半年。半年早く貴女に出会えていたなら」
    雨に打たれるのにも構わずに、吐き出される言葉。
    「なんでだろうね、嗚呼、なんでだろうねえ。私はいつも気づくのが遅すぎる」
    「……貴女は誇りを奪われているのに。とうに倫の外道に落ちているのに。
     それでも私は未練を断ち切れないんだよ」
    雫が滴る前髪の奥の、苦しそうに細められる両の目に。
    暗い炎が灯されているように見えて、背筋にぞくりと寒気が走りました。




    周回特典【俺の妹の来世がこんなに可愛くないわけがない】

    「はいはい! こんにちはクズ先祖様!
     あなたの可愛い子孫です!
     このたびはエイプリル嘘企画でまさかの主役ですね、クズ兄貴!
     まあ現実的にはムリムリムリって感じなんですけど!
     どう考えても後のカーニバルですけど!」

    「…………」

    「廉治さんが登場したら、その時点でもう貴方、負け確ですよ。
     空からイケメンが降ってきたら誰だってコロっといきますって。
     親方ー! 空から好男子がー!
     ていうか、そもそも不倫、ダメ、ゼッタイ。
     結婚したらその時点でアウト。
     いや結婚してなくても本来はアウトなんですけど
    かといって岡山時代にあんまり早くアプローチしてても
     八里家での立場が悪くなるだけで微妙ですよね。
     どうみてもロリコンだし。アウトアウト」

    「……とりあえず、その手に持ってる釘バットを下ろしてくれ」